蹄: 熱い山羊革の匂いをかぎな。
第20投。432ページ、2819行目。
THE HOOF: Smell my hot goathide. Feel my royal weight.
BLOOM: (Crosslacing.) Too tight?
THE HOOF: If you bungle, Handy Andy, I’ll kick your football for you.
蹄: 熱い山羊革の匂いを嗅ぎな。堂々たる重みを感じな。
ブルーム: (紐を締めながら)きつくない?
第15章。幻想的な戯曲の形式で書かれている。
ベラ・コーエンの娼館。女主人のベラが登場し、椅子に乗せたブーツの紐をブルームに結ばせている。
「ユリシーズ」はホメロスの「オデユッセイア」のモチーフをベースにしており、ベラ・コーエンは、魔女のキルケ―に対応する。キルケ―は人を動物に変える魔法を使う。
少し前に、a plump buskined hoof and a full pastern, silksocked(編み上げブーツを履いたふっくらしたhoof, 絹靴下をはいたpastern)とある。pasternとは「馬の脚のくるぶしとひづめの間」とのこと。だからHoofとは馬の足に変身したベラの足だろう。少なくとも有蹄類の足。
「ハンディ・アンディ」とは、アイルランドの作曲家、小説家のサミュエル・ローバー(1797 - 1868)の小説『ハンディ・アンディ』(1842)の主人公。地主の奉公人として雇われたアンディは何事にもへまをしでかす特異な才能を持つ人物だった。
その後、固有名詞の「ハンディ・アンディ」は「こまごました仕事を何でもする雇い人」「便利屋」「何でも屋」をあらわす一般名詞となった。現在ではDIYショップの商号などにもなっているようである。
たまたま、『フィネガンズ・ウェイク』の第9章(229ページ)に、こういう一節を見つけた。"Wild primates not stop him frem at rearing a writing in handy antics."
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