Ulysses at Random

ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』をランダムに読んでいくブログです

25 (U368.608)

(彼は売春婦たちの溜りを抜けて、

第25投。368ページ、608行目と出ました。 

 (He plodges through their sump towards the lighted street beyond. From a bulge of window curtains a gramophone rears a battered brazen trunk. In the shadow a shebeenkeeper haggles with the navvy and the two redcoats.)

 

 THE NAVVY: (Belching.) Where’s the bloody house?

 

 THE SHEBEENKEEPER: Purdon street. Shilling a bottle of stout. Respectable woman.

 

 

 (彼は売春婦たちの溜りを抜けて、通りの明るいほうへ歩いていく。窓のカーテンのふくらみから蓄音機の形のくずれた真鍮のラッパがとびだしている。物影でもぐり酒場の主人が道路工事人と2人の赤服の兵士と言い合っている。)

 

 道路工事人(げっぷして):そのぼったくり酒場はどこだい。

 

 もぐり酒場の主人:パードン通りさ。スタウト1本1シリング。まともな女がいるよ。

 

第15章。夜中の12時過ぎ。ブルーム氏は酔っ払ったスティーヴンとリンチの2人を追って、娼家街へやってきた。マボット通りからメクレンバーグ通りに入ったあたり。

 

2人の兵隊とは後でスティーヴンと衝突するコンプトンとカーの二人だろう。当時ダブリンは英国の都市であり英国兵は赤い制服を着ている。

 

 蓄音機も、後に登場して『聖なる都』を奏でる蓄音機と思われる。(U413.2170)

 

trunk とは何かわからない。真鍮の、というのでラッパと理解した。

rear も分からない。辞書上の、立てる、持ち上げる、との意に近いのだろうと理解した。

 

shebeen はアイルランドのことばで、無許可で酒類を提供するもぐり酒場。

 

1904年当時正規の酒場の閉店時間は11時だった。もぐり酒場ではまだ酒が飲める。当時の1シリングは、今の値打ちで約4ポンド、つまり550円くらい。正規の値段より高いのだろうがむちゃくちゃなぼったくり価格ではないようだ。

 

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蓄音機(gramophone)

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