概していえば、『ドン・ジョヴァンニ』
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On the whole though favouring preferably light opera of the Don Giovanni description and Martha, a gem in its line, he had a penchant, though with only a surface knowledge, for the severe classical school such as Mendelssohn.
概していえば、『ドン・ジョヴァンニ』の類の軽いオペラやその系列の珠玉である『マルタ』を好みにおいて、愛好するが、表面的な知識しかないものの、メンデルスゾーンのような厳格な古典派に傾倒していた。
第16章。真夜中。馭者溜りでブルーム氏はスティーヴンに自分の音楽の好みを語っている。
この章は、たわいのないことを難しい言い回しで述べたり、ことさら外国語をつかったり、陳腐な慣用句やことわざを多用する文体となっている。
ここでも、On the whole とか a gem in its line といった慣用句が不自然に用いられる。penchant は気障なフランス語。favouring preferably は同義反復的だし、though を重ねて悪文となっている。
内容的にもまた違和感のあるものである。『ドン・ジョヴァンニ』は『マルタ』と同系列のオペラではないし、軽いものではない。メンデルスゾーンも、厳格な古典派ではない。
これはブルーム氏がそう思っているのだろうか、あるいは、ブルーム氏の台詞を無知な語り手が歪めているのだろうか。
『ドン・ジョヴァンニ』は言わずと知れたモーツアルトのオペラ。ブルーム氏の妻モリ―は、愛人のボイランの企画するコンサートツアーでこのなかの曲を歌うことになっている、
『マルタ』(Martha)は、ブログの18回で触れたとおり、ドイツの作曲家フリードリッヒ・フォン・フロトー作曲のオペラ。今日の昼、オーモンド・ホテルでスティーヴンの父サイモンがそのなかの曲を歌った。ブルーム氏は、偽名で会ったこともない女性と秘密の文通をしている。その相手がマーサ(Martha)。
『ドン・ジョヴァンニ』と『マルタ』は不義のテーマで通じている。
メンデルスゾーン(1809年 - 1847年)はブルーム氏とおなじユダヤ系の人である。
メンデルスゾーン・バルトルディ(Mendelssohn Bartholdy)
File:Mendelssohn Bartholdy.jpg - Wikimedia Commons
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