Ulysses at Random

ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』をランダムに読んでいくブログです

37 (U363.462)

ブリーン夫人:(堰を切ったように)猛烈にティーポット。

第37投。363ページ、462行目。

 

 

 MRS BREEN: (Gushingly.) Tremendously teapot! London’s teapot and I’m simply teapot all over me! (She rubs sides with him.) After the parlour mystery games and the crackers from the tree we sat on the staircase ottoman. Under the mistletoe. Two is company.

 

 ブリーン夫人:(堰を切ったように)猛烈にティーポット。ロンドンがティーポットでわたしの全身とってもティーポット。(彼にすり寄って)客間のあてっこゲームとツリーのクラッカーのあと、わたしたち階段下のソファーに座ったね。ヤドリギの下で。二人なら仲睦まじ。

 

 

第15章。幻想と現実がまじりあう。フェリーニの映画「81/2」のように、その場にいない人物が現れる。ブルーム氏の元カノ、ジョージ―・ブリーン(旧性ポーエル)が登場し、ブルーム氏と会話する。

 

彼女は、ブルーム氏と恋人同士だったころ、クリスマスイヴ、ジョージナ・シンプソンの新築祝いのパーティーでのことを話している。

 

ティーポットというのは、そういう名前のゲームのこと。Mary White. "Teapot". The Book of Games. (Charles Scribner's Sons, New York NY 1896)によるとつぎのような。遊び。

 

一人のプレイヤーが部屋の外に出て、他のプレイヤーが言葉を考える。「電車」という言葉を選んだとする。外に出ていたプレイヤーが部屋に入ってくると、他のプレイヤーが順番に、「電車」が使われている文を、「電車」の代わりに 「ティーポット」という言葉を使って、言う。たとえば「ティーポットに乗るのが好き」、「フットボールの試合にティーポットで行く」といった具合。プレイヤーが言葉が当てた場合は、当てられた人は、部屋の外に出て、ゲームは以前と同じように進行する。

 

ロンドンがティーポット London’s teapot、というのは  Scotland's Burning(英国ではLondon's Burning)という童謡・輪唱の歌詞にティーポットをはめたもの。だからゲームのこたえは  Burning ということ。

 

この少し前の箇所でブルーム氏は London's burning と口ずさんでいた。(U355.172)

さらにDublin's burningと変奏される。(U488.4660)

 

クラッカーはわれわれの思いうかべる円錐形のクラッカーではなく、英国でクリスマスに用いられるクラッカーのことだろう。円柱形の大きなキャンディのようなもので、両端を2人で引っ張ると、破裂して、プレゼントが飛び出す。

 

the staircase ottoman  というのが何なのかわからない。階段の下に空いた空間においたソファーと想定する。

 

西欧では、クリスマスにカップルがヤドリギの下でキスをするという風習がある。
クリスマスに、ヤドリギの下にいる若い女性はキスを拒むことができない。キスを拒んでしまうと、翌年は結婚のチャンスが無くなってしまう、という言い伝えもある。

 

英国ではヤドリギを使って球状の飾りを作る習慣があり、この飾りはkissing ball, Christmas-bough, mistletoe-boughなどと呼ばれる。

 

客間の階段の裏面にヤドリギの飾りを釣って、その下にカップル用にソファーが設けてあった。そこにブルーム氏とジョージ―が座ったということではないか。

 

 ブログの17回で、サンザシのシンボリズムについて書いたが、ヤドリギにも似たシンボリズムがある。

 

  1.  ケルトの伝説ではヤドリギは「不死・活力・肉体の再生」を表すシンボル。ヤドリギが生えている木には神が宿っていると言われた。ドルイドが行う儀式は、ヤドリギが寄生したオークの木の下で行われた。
     
  2. 北欧神話ヤドリギの伝説。不死身とされていた光の神バルドルは、ヤドリギで作った槍で命を落とす。バルドルの母フリッグは、世界の万物に彼を傷つけないよう約束させていたが、ヤドリギだけは若すぎて契約が出来ていなかった。これを知った神ロキが、バルドルの弟ヘズをたぶらかし、バルドルヤドリギを投げさせた。これによりバルドルは命を落とした。

  3. キリストが処刑された時の十字架を作った木にヤドリギが巻きついていたという。 あるいは、元々ヤドリギは大木で、ヤドリギから十字架が作られた、神の怒りを買い、他の樹木に寄生することでしか生きられなくなった。

  4. ジェイムズ・フレイザーの『金枝篇』で論じられた伝承。イタリアのアリキアのネミの村に伝承される掟があった。アルバの山の麓に「森のディアナ」という聖所がありその神域には折りとることを許されない一本の聖なるヤドリギがあった。祭司は「森の王」とも呼ばれ、強大な権限を有したが、次の祭司を志願するものは、聖なる樹の枝を折りとり、祭司を殺した後にその職につくことができた。

  

Two is company というのは、Two is company, three is a crowd. / Two is company, three is a none.「二人で仲間、三人では群衆(なかまわれ)」という諺から。

 

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The Great Fire of London

File:Great Fire London.jpg - Wikimedia Commons

 

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