Ulysses at Random

ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』をランダムに読んでいくブログです

105 (U597.1962)

出奔は不合理でないことについていかなる検討がなされたか。

 

第105投。597ページ、1962行目。

 

 What considerations rendered departure not irrational?

 

 The parties concerned, uniting, had increased and multiplied, which being done, offspring produced and educed to maturity, the parties, if not disunited were obliged to reunite for increase and multiplication, which was absurd, to form by reunion the original couple of uniting parties, which was impossible.

 

 出奔は不合理でないことについていかなる検討がなされたか。

 

 結合した関係当事者が既に増加、増殖し又しつつあるその産出された所産の成熟は達成されたのだが、当該当事者が仮に分離されない場合、増加、増殖のため再結合せざるを得ないが、それは不条理であり、再結合により結合する当該当事者が元の一組を構成することは不可能であった。

 

第17章は、始めから終わりまで問いと答えの形式により進行する。

 

帰宅したブルーム氏は、ブログの第46回で触れたような悲惨な境遇におちいることを回避するには、死亡または出奔しかない、と考える。ここは出奔について検討するブルーム氏の思考。

 

なぜ、家族を捨てて失踪すれば、悲惨な境遇を回避できるのだろう。彼の稼ぎでは家族を養いきれないということだろうか。前回のブログで見たように、彼は今日のもらった報酬約1ポンド7シリングに対し、一日で約1ポンド5シリング支出しているのだから無理もない。

 

ここは、学術的な言い回しを用いているが、その意味はにこういうこと。

 

ブルーム氏は妻のモリーと結婚し、ミリーとルディーの2人の子供をもうけた。しかし11年前に生まれたるルディーは生後11日目で亡くなっている。妻のモリーは愛人のボイランと関係をもっているわけだし、ブルーム氏としてはさらに子供をつくる気持ちはない、と。

           

                                                        科学の結婚

File:Alchemy - Mercury and sulfur personified - Wellcome Collection.jpg - Wikimedia Commons

 

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