Ulysses at Random

ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』をランダムに読んでいくブログです

244 (U260.911) ー 伝説の英雄もしたスポーツ

いと高貴なる結社の尊き長、議長の席に就き

第244投。260ページ、911行目。

 

 The venerable president of the noble order was in the chair and the attendance was of large dimensions. After an instructive discourse by the chairman, a magnificent oration eloquently and forcibly expressed, a most interesting and instructive discussion of the usual high standard of excellence ensued as to the desirability of the revivability of the ancient games and sports of our ancient Panceltic forefathers. The wellknown and highly respected worker in the cause of our old tongue, Mr Joseph M’Carthy Hynes, made an eloquent appeal for the resuscitation of the ancient Gaelic sports and pastimes, practised morning and evening by Finn MacCool, as calculated to revive the best traditions of manly strength and prowess handed down to us from ancient ages.

 いと高貴なる結社の尊き長、議長の席に就き、各界の列席者の數や夥しかりき。議長の有益なる論説はまことに壯麗なる演説にして雄辯かつ力強く提示せられ、これに續きて我らが古の汎ケルト父祖の營みし古代の競技、遊戯の復興を待望する議論、常のごとく卓越せる水準を以て展開せられたり。また我らが古の言語の為の高名にして尊敬すべき盡力者ジョセフ・マッカーシー・へインズ氏は、朝な夕なにフィン・マックールの勤しみし古式ゆかしきゲール式スポーツおよび娯樂の復活につき雄辯に訴へた、曰くそは古の時代より我らに傳へられし雄々しき屈强と剛毅とのこの上なき傳統の再興にこそ相應しきものなりと。

 

第12章は語り手の語るストーリーに、さまざまのパロディ的断章が突然さしはさまれながら進行する。このブログの第48回のところの直前の箇所。

 

酒場の面々は、アイリッシュ・スポーツを話題にしたが、その場面に続くパロディ断章の冒頭の一節。アイリッシュ・スポーツの復興団体の会議報告文のパロディーとなっている。

 

議長を務めるのは、民族主義者で「市民」というあだ名をもつ人物。へインズは、たまたま前回のブログで触れたとおり、スティーヴンの住居に滞在している英国人で、アイルランドの民間伝承を研究するため当地に来ている。

 

へインズは現実にはこの場にいないし、酒場の連中が彼のことを知っているとは思えない。そうするとこのパロディ断章は誰が語っているのだろうか、との疑問を禁じ得ない。やはり柳瀬さんが言うように「語り手」は「犬」という説ももっともらしく思えてくる。

 

フィン・マックールは、ケルト神話における英雄で、エリン(アイルランド)の平和を守るフィアナ騎士団の団長として有名。

 

 

"Finn MacCool" by (Carrie Sloan) is licensed under CC BY-NC-SA 2.0.

北アイルランドのアントリム県にある村ブッシュミルズにあるホテル兼パブ「フィン・マックール」。この建物は18世紀に遡る古いものだが、今年許可なく取り壊されてしまったという。

→ The Irish News

 

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