Ulysses at Random

ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』をランダムに読んでいくブログです

49 (U76.176)

転轍手の背中がおもむろにしゃんと立った。

今日6月16日は、ブルームズデイ。小説『ユリシーズ』は1904年6月16日に起こった出来事を描くので、小説の主人公の姓にちなんでそうよばれる。

 

第49投、76ページ、176行目。

 

 A pointsman’s back straightened itself upright suddenly against a tramway standard by Mr Bloom’s window. Couldn’t they invent something automatic so that the wheel itself much handier? Well but that fellow would lose his job then? Well but then another fellow would get a job making the new invention?

 

 転轍手の背中がおもむろにしゃんと立った。ブルーム氏の窓から見て路面電車の電柱の向こう。切り替えがもっと楽になるような何か自動の装置を発明できないものかな。でもそうしたらあいつは職を失うのか。でもそうしたら別のやつが新発明を作る職に就けるわけか。

 

 第6章。午前11時ごろ。ブルーム氏は友人のディグナム氏の葬儀に参列するため、ダブリンの南東に位置するディグナム家から、馬車で市の北西のはずれ、グラスネヴィン墓地まで街を縦断している。そのブルーム氏の思考。

 

馬車には、スティーヴンの父サイモン・デッダラス、ジャック・パワー、マーティン・カニンガム、そしてブルーム氏の4人が乗っている。

 

4人は向かい合って座っており。進行方向にむかって、左前方に後ろ向きにサイモン、その隣にパワー氏、その向かいに前向きにカニンガム氏、その隣にブルーム氏が座っていると考えられる。

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馬車はウエストランド通り駅(現ピアーズ駅)の北側、グレイト・ブランズウィック通り(現ピアーズ通り)を西へ進んでいる。馬車はウエストランド通りと交差点へ差しかかるところ。

 

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路面電車の電柱とは、下に掲載の絵葉書にあるものと思われる。道路の中央に立っているので、左側通行の馬車からは右になる。馬車の左後ろに座るブルーム氏の窓から見えるというのは少々つじつまが合わない。

 

交差点で、左(南)へ走るウエストランド通りのほうを見て、その通りにある電柱と転轍手を見たということだろう。

 

ブルーム氏は発明好きで、この小説中でもいくつかの発明を思いついている。

 

人工知能が発達すると職を失う人が出るが、人工知能を作る人が必要になるって、今もよくいわれることだ。そんなことをみんな100年前から考えていた。

 

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グレイト・ブランズウィック通り(Great Brunswick Street)- 1916年

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