主唱:ねえねえ、まってよ、いっしょに行こう。
第138投、350ページ、20行目。
THE CALLS: Wait, my love, and I’ll be with you.
THE ANSWERS: Round behind the stable.
(A deafmute idiot with goggle eyes, his shapeless mouth dribbling, jerks past, shaken in Saint Vitus’ dance. A chain of children ’s hands imprisons him.)
THE CHILDREN: Kithogue! Salute!
THE IDIOT: (Lifts a palsied left arm and gurgles.) Grhahute!
THE CHILDREN: Where’s the great light?
THE IDIOT: (Gobbling.) Ghaghahest.
主唱:ねえねえ、まってよ、いっしょに行こう。
応唱:馬小屋の裏あたりまで。
(聾唖でぎょろ目のまぬけがだらしない口からよだれをたらして、舞踏病の痙攣でぎくしゃく行き過ぎる、手をつないだ子供たちが取り囲む。)
子供たち:ぶぎっちょやい、ごきげんよう。
まぬけ:(麻痺した左手を上げてごろごろ言う。)ごぎげんよう
子供たち:大いなる光どこだ。
まぬけ:(ごろごろと。)ぐにしぐれだ
第15章。真夜中の娼館街。この章は戯曲形式で書かれている。章の冒頭のト書の直後の台詞。ト書の末尾に “Whistles call and answer”. とあるので、口笛か警笛が呼び交わしていると読めるのだが、冒頭の台詞は誰が発しているのだろう。
後のつながりから、子供たちの声ととりあえず考える。子供の歌のジャンルに掛け合い歌(Call and response)というのがあるので、これではないか。
何かの歌の歌詞を応答しているのかもしれないが、検索してもわからなかった。
子供たちは聾唖者を取り囲むが、これも子供の遊びの類型で、輪遊び(Circle games)の一つと考えられる。日本でいうとカゴメのような。
聖ヴィトゥス(Saint Vitus, 290年頃 - 303年)は、キリスト教の聖人。中世後期、ドイツやラトビアなどでは、聖ヴィトゥスの像の前で踊って彼の祝日を祝っていた、がこのことから神経性の病気にみられる舞踏運動が「聖ヴィトゥスの踊り」と呼ばれるようになったという。
”Kithogue” はダブリンのスラングで「左利き、不器用な人」(Left-handed or awkward person) ⇒ Dublin Slang Dictionary and Phrase-book
”Grhahute!” は ”salute!"と言おうとしている。
”Ghaghahest” は ”gone west” ではないか。日は西に沈んだという事。
なぜ、15章の冒頭は、ブリューゲルやボッシュの描く悪夢の世界のような奇怪な場面ではじまるのか、なぜ真夜中なのに子供が遊んでいるのか、なぜ聾唖の人物に問いかけて答えられているのか、いろいろなことが分からない。
Jessie Willcox Smith によるイラスト (1912)
リング・ア・リング・オー・ローゼズ(Ring a Ring o' Roses)を踊る子供たち.
File:Ring-a-round-a rosesSmith.jpg - Wikimedia Commons
リング・ア・リング・オー・ローゼズは、古くから伝わる童謡で、子供たちが手をつなぎ輪になって唄われる。
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