Ulysses at Random

ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』をランダムに読んでいくブログです

19 (U222.560)

まあ、なるほど、あれで彼のバス・バレルトーンが出るわけだ。

第19投。222ページ、560行目。

Well, of course that’s what gives him the base barreltone. For instance eunuchs. Wonder who’s playing. Nice touch. Must be Cowley. Musical. Knows whatever note you play. Bad breath he has, poor chap. Stopped.

 

まあ、なるほど、あれで彼のバス・バレルトーンが出るわけだ。たとえばカストラート。誰が弾いているんだろう。いいタッチ。カウリーに違いない。音楽的。弾いている音が何たるか分かっている。息が悪い、哀れなやつ。止まった。

 

 

偶然にも3回連続で近いところに当たった。オーモンド・ホテルのサルーン、カウリー氏のピアノ伴奏で巨体のベン・ドラードが歌っている。曲はトマス・シンプソン・クーク(Thomas Simpson Cooke)作曲の『恋と戦争』。それを離れたレストランで聞くブルーム氏の心中。

 

1894年、グレンクリー感化院の慈善演奏会で歌うベン・ドラードは礼服をもっていなくて、当時古着屋や貸衣装を副業にしていたブルーム家へ寄って燕尾服を借りた。(U222.554)(U220.474)(U636.1285)

ズボンがきちきちで股間のもりあがりがはっきり見えた。だから。カストラート(去勢した歌手)のことを連想している。

 

(U233.1027)でも、再びこう思っている。”Good voice he has still. No eunuch yet with all his belongings.”

 

base barreltone は、ドラードを思わす樽とバス・バリトンを掛けている。赤三角印のビール銘柄バスもか。

 

Bad breathが分からない。

 

哀れ、というのは、カウリー氏はユダヤ人の金貸しルーベンから借金しており、零落しているからだろう。(U200.890)

 

11章は音楽的言語で書かれている。stopはオルガンのストップ(音栓)から。

 

 

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最も有名なカストラートファリネッリ(1705年 - 1782年)

"Portrait de Farinelli par Bartolomeo Nazari (Grand Palais, Paris)" by dalbera is licensed under CC BY 2.0

 

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