―その筋のことには一切手を出しません。
第42投。142ページ、827行目。
—I wouldn’t do anything at all in that line, Davy Byrne said. It ruined many a man, the same horses.
Vintners’ sweepstake. Licensed for the sale of beer, wine and spirits for consumption on the premises. Heads I win tails you lose.
―その筋のことには一切手を出しません。デイヴィー・バーンは言った。大ぜい身を崩しましたから、なんたって馬でね。
酒販業者ステークス。酒類提供飲食店営業免許。表が出たら私の勝ち、裏が出たらきみの負け。
昼過ぎ、ブルーム氏は軽食をとりに、デイヴィー・バーンの店 (Davy Byrnes) に入った。客のフリン氏が店の主人と会話している。
デイヴィ―・バーンは、このブログの第3回で言及したパブ。今日はアスコット競馬場で金杯レースがあるのでフリン氏は主人に勝ち馬の情報を聞いた。初めの台詞は主人の答え。
wouldn’t do は「何があってもしない」というニュアンスを感じる。
the same は、「いつも、かわらず」 という意味だろう
2番目の文は、会話を聞いている、ブルーム氏の心中の声。
sweep stakeとは競馬の賞金形態。
レースに所有馬を出走させる馬主が賭け金 (stake) を出し合い、それを集めたもの を勝者に分配するという方法がステークス方式。勝者が賞金を総取り (sweep) するスウィープステークス (sweep stakes) が縮まってステークスになったとのこと。
Heads I win tails you lose の heads はコインの表で、tails は裏。ほんとは裏ならきみの勝ちだが、引っかけになっている。英語の慣用句で、どっちに転んでも自分の勝ち、という意味になる。
店に入ったところで、ブルーム氏はデイヴィー・バーンはケチだと想起している。競馬なんかには手をださず、人に酒を飲ませてがっぽり儲けていると、からかっているのだと思う。
"Davy Byrnes, the Moral Pub" by Antonia Hayes is licensed under CC BY-NC-ND 2.0
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