Ulysses at Random

ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』をランダムに読んでいくブログです

1 (U123.1075)

-片取っ手付きの不倫男か

まず一投目。123そして1075と出た。

神様(God Almighty)のなせる業か、まずまず面白いところが出ました。

第7章のいちばん最後。

 

—Onehandled adulterer, he said smiling grimly. That tickles me, I must say.

—Tickled the old ones too, Myles Crawford said, if the God Almighty’s truth was known.

 

-片取っ手付きの不倫男か、彼は苦笑して言った。実に傑作だな。

-あの老人たちにも傑作だったろう。マイルズ・クローフォードが言った。全能の神の真実が知れたなら。

  

新聞社の論説委員マッキュー先生、編集長クローフォードらの一行が新聞社から出てオコンネル通りにさしかかる。

 

一つ目は、新聞社のマッキュー先生の台詞。smiling, grimly, me, must と、mの連続、そしてtickles, trickledで、2つの台詞がつながる。

 

片取っ手付きの不倫男 Onehanded adulterer とは英国の英雄ネルソン提督のこと。小説『ユリシーズ』の現在1904年当時、小説の舞台、ダブリンは英国の都市であり、ここ、目抜き通りのオコンネル通りにはネルソン像が乗った高い塔が立っていた。

 

ネルソンは戦場で片目と片腕を失っていた。また人妻エマ・ハミルトンとの不倫は有名で、夫サー・ウィリアムは妻の浮気を黙認していた。これはこの小説のボイランと主人公であるブルーム夫妻の関係と対応している。そしてブルーム夫妻の寝室にある、片取っ手の「おまる」と結びつく。(U446)

 

ネルソンはこの小説の主要なモティーフの一つ。

 

ネルソンの柱は1966年3月に何者かに破壊され、その後撤去された。跡地に今は「ダブリンの尖塔」というのが立っている。

 

筆者が1995年に訪問した時、ネルソン像の残骸であるその頭部をDublin Civic Museumという所で見たが、現在それはダブリン市立図書館 に展示されているという。

 

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 ネルソン塔(Nelson's Pillar)