わたし疲れたといってわたしたちはモミの木の洞くつで横になった
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I said I was tired we lay over the firtree cove a wild place I suppose it must be the highest rock in existence the galleries and casemates and those frightful rocks and Saint Michaels cave with the icicles or whatever they call them hanging down and ladders all the mud plotching my boots Im sure thats the way down the monkeys go under the sea to Africa when they die the ships out far like chips that was the Malta boat passing yes
わたし疲れたといってわたしたちはモミの木の洞くつで横になった荒れ果てた地あれはたぶん世界一高い岩ね地下道や砲台やすごい岩があって聖マイケル洞くつにはつららとかなんとかいうのが垂れ下がっていたそれにハシゴ泥のシミがブーツについたきっとあの道をとおってサルたちは海の底をくぐってアフリカまでいって死ぬのよ遠くに船が見えるフライドポテトみたいマルタ島から来たのええ
第18章。最終章はブルーム氏の妻のモリ―の心中の声。一つの章がピリオドもコンマもない単語の長大な連なり8つでできている。ここはその5つ目のはじめのほう。
モリーは幼いころ住んだ英領ジブラルタルと当時の恋人のマルヴィーのことを思い出している。ここでモリーが思い出している場所は、現在のジブラルタルでも観光の名所となっている。
Giffordの注釈によると “the firtree cove”という場所は存在しないらしい。”Fig Tree Cave”「フィグツリー洞窟」の誤りではないかと。フィグツリー洞窟はジブラルタルの「ロック」(岬の南端の岩山)の東の崖にあり、アッパーロック自然保護区内のマーティン洞窟に近い。
地下トンネルや砲台があるのは、大包囲戦トンネル“Great Siege Tunnels”
大包囲戦トンネルは、「ロック」の北端にあるトンネル。18 世紀後半のジブラルタルの大包囲戦の際にイギリス軍によって掘られた。「ロック」の北面の一連のトンネルに砲台が配置された。
大包囲戦トンネルにおけるイギリス軍砲手の再現
File:Great Siege Tunnel gunners reconstruction.jpg - Wikimedia Commons
聖マイケル洞窟 ”St. Michael's Cave”は アッパーロック自然保護区内の海抜300メートル(98以上の高さにある洞窟群。「ロック」の地下を通る洞窟は24キロにもおよぶ。
聖マイケル洞窟の内部
File:Gibraltar St. Michael's Cave interior 3.jpg - Wikimedia Commons
「ロック」には、北アフリカが原産のバーバリー猿 “Barbary macaques” という種類の野生の猿が生息している。ジブラルタルのバーバリー猿は、聖マイケル洞窟とモロッコの間の地下通路を通ってアフリカからロックに入ったという伝説がある。
ジブラルタル自然保護区のバーバリ猿
File:Monkey in Gibraltar 09.jpg - Wikimedia Commons
◆フィグツリー洞窟 ◆大包囲戦トンネル ◆ロックの頂上 ◆聖マイケル洞窟 ◆猿の生息地
ロンドンとファルマス、イベリア半島の港、ジブラルタル間の郵便および旅客サービスは、1837年「半島汽船会社」"the Peninsular Steam Navigation Company"(P&O 汽船会社 the Peninsular and Oriental Steam Navigation Company の前身)により開始された。その後、郵便船の航路はジブラルタルからマルタ、コルフ島、アレキサンドリアへと拡張された。
モリーの見た船は下の写真のようなP&Oの汽船と考えられる。
1870 年頃のヴェネツィアの P&O社汽船
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