Ulysses at Random

ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』をランダムに読んでいくブログです

53 (U282.1877)

高名なる王室および治安書記官ジョージ・フォットレル閣下

第53投。282ページ、1877行目。

 

 

An article of headgear since ascertained to belong to the much respected clerk of the crown and peace Mr George Fottrell and a silk umbrella with gold handle with the engraved initials, crest, coat of arms and house number of the erudite and worshipful chairman of quarter sessions sir Frederick Falkiner, recorder of Dublin, have been discovered by search parties in remote parts of the island respectively, the former on the third basaltic ridge of the giant’s causeway, the latter embedded to the extent of one foot three inches in the sandy beach of Holeopen bay near the old head of Kinsale.

 

高名なる王室および治安書記官ジョージ・フォットレル閣下の所有物であることが確認された被り物一件ならびに博学にして敬虔なる四季裁判所長官、ダブリン市判事長、フレデリック・フォーキナー卿のイニシャル、家紋、紋章および家屋番地がその金の柄に刻印された絹の傘一本、それらは捜索隊によりこの島国の遠く隔絶した場所にて発見されたのであるが、前者はジャイアンツ・コーズベイの3番目の玄武岩隆起上にて、後者はキンセールはオールドヘッド岬近辺のホールオープンビーチの砂中に1フィート3インチの深度で埋まっていたのである。

 

 

第12章は語り手の語るストーリーに、さまざまのパロディ的断章が突然さしはさまれながら進行する。そのパロディ断章の一節で、この章の一番おしまいの部分。

 

バーニーキアナンの酒場。主人公のブルーム氏は、ナショナリストの「市民」と口論になる。激怒した「市民」は立ち去るブルーム氏にビスケットの缶を投げつけた。

 

ここは、ビスケットの缶の落下を、隕石かなにかの落下による大地震の報告文のパロディにしている。

 

震源地は裁判所のようである。バーニーキアナンのすぐ近くには、グリーンストリート裁判所があったからだろう。

 

ジョージ・フォットレル氏(1849-1919)の地位について「王室および治安書記官」と訳したが  clerk of the crown and peace とはどんな役職なのか。検索すると記述はあるが、英国の司法制度(しかも904年の)は難しすぎてよくわからない。どうも刑事裁判手続きをサポートする行政官のようである。

 

フォットレル氏は、15章のブルーム氏の裁判の幻想場面にも登場する。U376.895)

 

フレデリック・フォーキナー氏 (1831 – 1908) は裁判官、弁護士、文筆家。

 

ブルーム氏は、今日フォーキナー氏がフリーメイソン会館へ入っていくの目撃している。(U149.1151) ブルーム氏はフォーキナーのことを悪しざまに空想している。フォーキナー氏は反ユダヤ主義で有名だったとのことで、ユダヤ系のブルーム氏は、彼に反感をもっているのだろう。

フォーキナー氏は12章のもう少し前のところでも話題に登っている。(U264.1096-1121)さらに、15章のブルーム氏の裁判の幻想場面にも登場し(彼は傘を持っている!)ブルーム氏に死刑判決を下す。(U384.1162-)

 

四季裁判所 Quarter Sessions は、定期的に行われた刑事事件処理のための司法機関および地方行政機関。地方の中小犯罪を扱う刑事裁判所で、大陪審とともに治安判事が裁いた。

 

ダブリン市判事長と訳したRecorder of Dublinは、主席の治安判事(magistratesまたは justices of the peace )で、民事・刑事の様々な事件を審理した。

 

フォーキナー氏の傘の柄に刻まれていた、コートオブアームズ coat of arms とは、厳密にはこういった紋章の盾の部分ことだけを指すという。

 

クレスト crest は、兜の上に置かれる紋章の構成要素の1つ。

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両法曹の持ち物はアイルランドの北端と南端で発見された。

 

ジャイアンツ・コーズウェイは、北アイルランドにある、火山活動で生まれた4万もの六角形の石柱群が連なる奇観。

 

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"Bushmills NIR - Giant’s Causeway 01" by Daniel Mennerich is licensed under CC BY-NC-SA 2.0

 

オールドヘッドは、アイルランドの南端、コーク州キンセール近くの岬で、岬の付け根にある湾がホールオープンビーチ。

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"From Garrettstown to the Old Head of Kinsale" by Rici86 is licensed under CC BY-NC-ND 2.0

 

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