バック・マリガンはいぶかしげに思案する。
第13投。163ページ、510行目。
Buck Mulligan thought, puzzled:
—Shakespeare? he said. I seem to know the name.
A flying sunny smile rayed in his loose features.
—To be sure, he said, remembering brightly. The chap that writes like Synge.
バック・マリガンはいぶかしげに思案する。
―シェイクスピア、彼は言う。名前は聞いたような気がする。
ゆるんだ顔に陽気な笑みがさっと差す。
ーたしか、彼ははっきり思い出したように言う。シングみたいに書くやつだ。
第9章。国立図書館で、リスター館長、スティーヴン、ベスト、エグリントンがシェイクスピアについて論じている。スティーヴンの同居人マリガンが入ってきたところ。
マリガンは、シェイクスピアを知らないわけがなく、とぼけている。
彼はスティーヴンと酒場TheShipで落ち合う約束をしていたが、スティーヴィンは行かないことを酒場気付の電報でマリガンに伝えていた。マリガンは図書館に何の用があっての来たのかわからない。
ジョン・ミリントン・シング (John Millington Synge,1871年-1909年)は、アイルランドの劇作家・詩人・小説家。紀行『アラン島』が有名。シェ―クスピアをシングになぞらえることがどう諧謔になるのか深いところが分からない。Sを合わせているのか。近松を、井上ひさしのように劇を書く人だ、というくらいのことだろうか。
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