Ulysses at Random

ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』をランダムに読んでいくブログです

87 (U373.773)

2人目の夜警:(涙をうかべブルームを見て。)お前はとことん恥じるべきだ。

 

第87投。373ページ、773行目。

 

 SECOND WATCH: (Tears in his eyes, to Bloom.) You ought to be thoroughly well ashamed of yourself.

 

 BLOOM: Gentlemen of the jury, let me explain. A pure mare’s nest. I am a man misunderstood. I am being made a scapegoat of. I am a respectable married man, without a stain on my character. I live in Eccles street. My wife, I am the daughter of a most distinguished commander, a gallant upstanding gentleman, what do you call him, Majorgeneral Brian Tweedy, one of Britain’s fighting men who helped to win our battles. Got his majority for the heroic defence of Rorke’s Drift.

 

 2人目の夜警:(涙をうかべてブルームを見て)お前はとことん恥じるべきだ。

 

 ブルーム:陪審員の皆様、どうか説明させてください。全くのでっち上げです。あの、誤解なんです。あの、はめられたんです。あの、私は立派な既婚男性でまっとうな人物です。あの、住所はエクルズ通り。妻は、あの、著名な司令官の娘で、勇敢で立派な紳士、えっとなんだっけ、少将だ、ブライアン・トウィ―ディー、われらの戦を勝利に導いた英国軍人。ロルクズ・ドリフトの英雄的防衛戦で少佐に昇格しました。

 

 

第15章。夜中の12時過ぎ。ブルーム氏は酔っ払ったスティーヴンとリンチの2人を追って、娼館街へやってきた。マボット通りからメクレンバーグ通りに入ったあたり。ブログの第25回の少し後のところ。

 

ブルーム氏は、豚の腿肉と羊の脚肉を犬にやっているところを怪まれ、2人の夜警(watch)に尋問をうける。15章は現実と幻想場面が交錯するが、ここでブルーム氏の裁判の場面に転換し、彼のさまざまな罪が告発される。

 

夜警(watch)ってなんだろうか。小説には警官(constables)も出てくる(ブログの第57回)が夜警と警官は区別されている。

 

ネット情報 Police History.com をもとにまとめるとこんなところ。

 

  • 18世紀以前のダブリンの警察組織は、非常に脆弱であった。

  • 昼間は警察がおらず、夜間は非効率的なwatchによる巡回警備行われていた。

  • watch は、各教区により任命され、教会区長と教区民から指名された cnstable に監督された。

  • 1715年に制定された法令で、Dublin Corporation(ダブリン市政府の旧名。会社ではありません) は、watchを任命する権限を持った。constables は watchを監督する立場。

  • 1777年、各小教区の住民は、6人から12人を選出し、ワード・モート・コートを構成する権限が与えられ、このコートがconstablesとwatchを選出することになった。

  • その後徐々に警察組織が整備されていった。

  • 1836年の法律で、1829年にロバート・ピール(Sir Robert Peel)が行ったロンドン警視庁の再編成と同じように、ダブリンの警察を変革。新しい警察組織は、アイルランド長官 (Chief Secretary for Ireland) の指揮下に置かれた。この警察組織は第33回でふれたダブリン首都警察(The Dublin Metropolitan Police)と思われる。constablesとwatchは警察組織に組み込まれることになった。

                                                   

                                       アイルランド、リメリック市の夜警

                                        A Limerick City Night Watch inspector, c. 1910.

 

ブルーム氏の台詞には、“I am” が繰り返されていて、うろたえていることを表している。

 

Mare's nest とは、「雌馬の巣」で、そんなものはないことから「大発見と見えて実は見かけ倒しの事、期待はずれ、でっちあげ、誤解 デマ」の意。

 

モリーの父親のトウィ―ディーは、小説の他の箇所では Major Brian Cooper Tweedy として言及されるので、少将でなく、少佐だろう。

 

ズールー戦争は、1879年にイギリス帝国と南部アフリカのズールー王国との間で戦われた戦争である。ロルクズ・ドリフトの戦い(Battle of Rorke's Drift)は、1879年に行われたズールー戦争中の戦闘の一つである。ズールー戦士約3000 - 4000名がロルクズ・ドリフトの伝道所跡に築かれた砦のイギリス軍守備隊を襲いかかったが、イギリス軍守備隊は、圧倒的に不利な兵力にもかかわらず奮闘し、2日間持ちこたえ、イギリス軍の増援が到着したためズールー軍は撤退した。

 

 

アルフォンス・ド・ヌヴィルの描く「ロクルズ・ドリフトの防衛戦」

Défense de Rorke's Drift by Alphonse de Neuville

 

File:Défense de Rorke's Drift.jpg - Wikimedia Commons

 

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